タカラモノ~桜色の片道切符~
あまり動かせない右腕で軽く、彼のシャツの袖を握った。



「美桜?」



『気持ち悪い』



一口しか食べていないはずなのに……


体が受け付けない。堪えるように左手で口元を押さえた。



「ごめん。もうちょっと我慢して」



ふわりと体が浮くと、キッチンに連れて行かれ、理央くんが思いっきり水道の蛇口を捻った



「吐いて良いから」



背中を擦られると、堪えていたものが再びこみ上げてきた。



『ッゲホ』



あの日から殆ど食べられていなかったせいか、水分しか出てこない。



それでも気持ちの悪さはなかなか治まらなかった。
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