タカラモノ~桜色の片道切符~
聞こえてくる確かな寝息に、握った手を離すと寝室を後にした。


伏せた写真たてをそっとおこすと、久しぶりの母と弟の顔。



「……」



何度捨てようと思っても捨て切れなかったものだ。


捨てられた。そんな感情から何度も破ろうとして、破れなかった。



「剛」



彼らはこの地球のどこかで笑っているだろうか?


幸せに暮らしているだろうか?



絶望から救われ、再び落ちた絶望を救ってくれたのはオーナーだった。


そのお陰でこうして時が、出会いが巡ったのだ。


奇跡と呼ぶのか運命(さだめ)と呼ぶのか?



どちらにしても感謝こそすれ、恨みはしない。



「美桜」



出会いを、再び出会えた手を離しはしない。



< 99 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop