反比例の法則
手にしていたロープをパッと手放し、ステージ脇から特注とも思える長さのモップを持ち出して来た。
そして、そのモップの持ち手部分をロープの上でしがみ付いているもう1人のクラウンのお尻に……グサッ。
「ヤメテェ~~!」
「キャハハハハッ」
クラウンの悲鳴と観客の笑い声が場内に響き渡った。
それを何度か繰り返し観客の心を鷲掴みにしたクラウンは、モップをポイッとステージ脇にいるスタッフに手渡し、今度は観客席へと移動し始めた。
それを待ってましたと言わんばかりにロープの上にいるもう1人のクラウンは、自分の身体にロープをグルグル巻きつけ、そしてステージの上へと真っ逆さまにクルクルと下りて来た。
ステージの床ギリギリの所でピタッと停止したのには流石とも思え、客席からは拍手が漏れ出す。
一方、客席に移動したクラウンは「ヒサシブリ~!」「ゲンキダッタ~?」と、満面の笑顔で客とハグを始めた。
勿論、友人でなければ家族でもない。
初めて見るクラウンなのだから、観客は驚きの表情を隠せないでいる。
けれど、そのフレンドリーさが愛嬌の1つだろう。
次々に握手やハグを繰り返しながら、次々に埋まる客席の視線を鷲掴みにしているのである。
そんな彼(クラウン)が、私の所にやって来た。
「オマタセ~!」
「ッ?!」