恋のおわり。
飲み過ぎたお父さんは案の定、和室で横になりそのまま寝てしまった。


毛布をお母さんがかける。


「お父さん、こんな所で寝て風邪引いちゃうよ」


「トイレに起きた時ベッドに寝かせるから大丈夫よ。岡島君、疲れたでしょう?
お父さん、飲み出すと話が止まらなくなっちゃうから」


「いえ。お父さんとお酒が飲めて良かったです」


「岡島君が帰って来るのが待ち遠しいのは奈緒だけじゃなくてお父さんもかもね。懲りずにお父さんに付き合ってあげてね、岡島君」


「はい」


酔いざましにコーヒーを飲んで少し時間をつぶす。
明日も仕事がある為、時間を見て帰る事にした。


相変わらず起きないお父さんはそのままにして。


「お父さんに宜しくお伝え下さい。
戻りましたら改めてご挨拶に伺います」


「ごめんなさいね。お父さん、一度寝ちゃったらなかなか起きないのよ。
岡島君の伝言は伝えておきます。
体に気を付けてね。奈緒を宜しくお願いします」


岡島君の海外赴任の話を聞いて少し驚いてたお父さんとお母さん。だけど、


『子供じゃない大人の二人なんだからこれからの事は二人で決めていきなさい。お父さんとお母さんは見守る事しか出来ないから』
と言ってくれた。





駅まで歩いて10分弱。


「大丈夫?酔ってない?」


「大丈夫だよ」


「お父さんに付き合って大丈夫ってお酒強いんだね」


「会社で鍛えられたのかも」


ハハハと笑う岡島君の横顔を見る。


「お父さんと二人の時、何話したの?」


「ナイショ」


「気になるなー」


私の手を取り







「…奈緒を幸せにしてやってくれって」


私の顔を見ながら微笑んだ。
繋いだ手がじんわり温かくなっていくのがわかった。












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