恋のおわり。
明日の今には岡島君はいない。
頭ではわかってるけど心が受け入れない。


「奈緒さん見て凄いよ。夜景」


カーテンを開け窓の外を見ている岡島君が私を呼んだ。


「奈緒さん」


ソファーに座ったままの私を再び呼ぶ。


海の向こう側の街の明かりが目に入ってきた。


「…きれい」


「いつもはあっち側にいるのにね。不思議な感じだよね」


「………うん」


涙声の私に気が付いた。
岡島君が私を見る。


私の肩に腕を回し頭を岡島君の肩に寄せた。




ダメだよ。





優しい岡島君に触れたら止めどなく涙がこぼれてきた。


岡島君の前に行き背中に腕を回す。
私を更に近づけ抱き締めた。


私の涙が止まるまで何も言わず抱き締めてくれてた。静かな空間にただ二人して抱き締めあっていた。


涙が枯れる事は無いけど段々と落ち着いてくる心。



フゥ~~。




「…ごめん。泣いちゃった~」


おどけて岡島君から腕を外した。


「…奈緒さん」


「フー。泣いたらスッキリした。
…陵太朗君、お酒飲まない?」


私の変わりように驚きと笑いを顔に浮かべた。


「可笑しい?」


「ううん。奈緒さんといると楽しいな~って」


見つめる岡島君が


「…俺、奈緒さんと離れてやっていけるかな?」


今度は岡島君が弱音を言う。


「やってもらわなきゃ困る。仕事頑張って早く私を迎えに来てくれなきゃ」


強気な私に微笑んで


「…そうだね」


「そうだよ」


私も微笑んだ。






「俺が頑張れるように奈緒さんにお願いがあるんだけど…」


「何?」


私に近づき







「奈緒の温もりを忘れない為に……しよっ」


耳元でささやいた。


そして素早くチュッと唇が触れる。






「…陵太朗の………エッチ」





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