世にも奇妙な話
「あなたは、誰?」

「冗談だろ?もう忘れたのか。俺は純一だ。貸間純一。というより、今までどうした、メールを返さないで」

 純一。なんて懐かしい名前だろう。しかしまだ顔は思い浮かばなかった。

「なんで私のメルアドを知っているの?」

「なんでって…俺たち、付き合ってんじゃん。待ってるぜ。お前があの時言った通り、あの約束だけは叶えられるように、頑張ってみるからな」

 そして私は壁にかかってある写真を見た。そこには私と一緒に写っている、ある男の笑っている顔があった。その男の目が合うと、なぜだか胸がドキドキした。

 冬の風が、私の心の窓をカタカタと叩いた。


 クリスマスの日になり、午前中を平和に過ごすと、もう昼を過ぎていた。しかし私はまだベッドの上に横たわり、純一のことを考えていた。これは朝からずっと考えていることであった。顔がどうしても思い出せない。純一とは一体誰のことか。いくら頭を動かそうとしても、何かが私の行為を抑止する。

 そして時間が流れる。永遠と続きそうな時間が私を取り巻いた。その中で、私は知らずに寝ていた。


「約束だよ。クリスマスの日の午後七時に、この場所で絶対に会おうね」

「ああ、約束だ」
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