世にも奇妙な話
「そうか。まだこの地の治安は安定していないか」

 若はしばらく持っていた貝殻を見つめていた。その何かやりたそうな目に、お月は気が付いた。

「若様。貝合せをやりませんか?せっかくですから」

 若は考えていなかったが、考えているフリをした。単に自分で切り出すのが恥ずかしくて、嫌だっただけだったのだが。

「ん…そうだな。せっかくだし」

「そうです。やりましょう」

 そして始めたのだが、若は始めに間違えると、次にお月は半分以上をめくってしまった。

「なぜだ…」

「なぜでしょ」

 またやったが、勝てなかった。

「なぜだ…」

「なぜでしょうね」

 今度は他の女中も混ぜてやったが、一向に勝てる見込みもない。

「なぜだ…」

「なぜでしょう」

「さてはずるを…」

「ただ洞察力がいいだけですよ」

 お月はにっこりと笑うが、若は不満だった。そして思いついた。新しいルールだ。特別にお月だけは一枚をとったら、次は若の番、というルールだ。

 そしてお月はそのルールを受け入れて、また新たに仕切りなおしをしたが、まだお月には勝てなかった。それも二回やった。

「…なぜ勝てないのだ」
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