世にも奇妙な話
 お月は得意そうだったが、若はなぜだと考えていた。その考えも、勝つ方向に変わると、また違うことを思いついた。

「お月、少し空けておいてくれないか?」

「なぜです?」

「いいから、少し空けてくれないか?」

「分かりましたが、部屋を燃やすようなことなどはしないで下さいね」

「…分かっとる」

 お月は部屋を出て行った。

「何を企んでいるのです?」

「見ておれ」

 若は引き出しから先の鋭い針を取り出した。そして貝殻に穴を開け始めた。

「若様…せっかくのお品が…」

「敵に勝つには、まず有利な立場ではじめなくてはならん。どんな時でもな」

 女中は笑ったが、若は必死に穴を開けていた。そして開け終わり、お月を呼んだ。しかしお月はなかなか現れず、しばらく呼び続けていると、再び縁側を走ってやってきた。

「すみません。遅れました。少し話をしていたもので…」

「まあ…よい。それよりもだ。今度は勝ってみせるぞ」

 そして始めるのだが、若がどんどんめくる中で、お月はその鋭い洞察力で、すべてを見破っていた。

「どうだ…」

 若はそう言うと、勝敗が分かっていたのだが、お月は嬉しそうに、純粋な態度で臨んだ。

「すごいです。どうしたのですか」

「秘密だ」

 若は得意そうにあった。そしてそれによって、お月も嬉しかった。若の笑っている顔が、何よりも幸せだった。お月にとって、天使を見ているようだったのだ。

 そうして若にとっては充実した一日は終わった。

 しかしその晩である。若は寝ていたが、急に用を足したくなり、起きた。そして用を足したその後の出来事である。義成様の部屋の前を通った時だった。こんな会話を耳にしたのだった。

「どうやら…もう、運は地に落ちたようじゃ」
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