世にも奇妙な話
 まず初めに思ったのが、この変わりようは何なのか、ということだ。木は切り倒されて、そこには家が建っていた。壁も落書きが多く、特にスプレーで描かれていた。あの優しく美しい絵も、かろうじて残っていた。あの少年はどこにもいない。家の陰に隠れていると思えば、そこにさえもいなかった。

 すると少年とは違う、やや不良に思える少年たちが現れた。手にはスプレー缶を持っている。何か離して楽しんでいるようだが、それは英語でもなければ日本語でもないので分からない。そして少年が描いていった絵の上からそのスプレー缶を噴出した。

 私は止めろと言おうとしたが、突然引っ張られる思いをして、いつの間にか倉庫に戻っていた。

「止めろって何だ?」

 そこには担任の先生がいた。私の肩には先生の手が乗っていた。私も突然のことに驚き、先生のいぶかしむ顔を見た。

 そして先生は続けた。

「ここで何をやっているかは知らんが…ここ、閉めるぞ。早く出ろ」

 先生は私の持っていたものに気付いた。

「…何を持ってんだ、それ」

 私は慌てて隠すようにして棚に置いた。私はなんでもないですと連呼をし、先生の脇を通って素早く脱出した。

 自転車に乗り、先生が追いかけてこないのを確認すると、やっと安心することができた。ゆっくりペダルをこぎ、一呼吸をおく。あそこに先生がいたのはびっくりしたが、さらに大きな衝撃はあった。あんなきれいな絵に、なぜスプレーで吹きかけたのだろうか。あんなことをする必要はあったのだろうか。ひどいことをするやつだ。私はその行動に信じられなかった。同じ人間が、あんなことをするのか。願わくば、違う生物でありたい。

 あの世界、どこなのだろう。もしあの世界にいたなら、私は迷わず他の異国の地に踏み込むだろう。

 家に戻り、腹の虫を抑えながら、夕飯を食べた。腹いせはないかと、ゲームに興じた。それでも虫はとどまり続け、まだ時計は早かったのだが寝ることにした。考えることも嫌で、思い返すことも嫌になった。

 人って、あれまで残酷になれる。今までいろんな人を見た。変質者や、不良。夜に負と現れ、そして声をかけてきて、笑う。私はまったく面白くなく、ただ変な汗をかいていた。そんなことを知らないので、どこかに誘おうとしたが私は逃げる。
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