世にも奇妙な話
 人の残酷な心をしみじみに、切実に感じた。なぜあのような人間が作り上げられるのか、その原理が分からない。私はただ、目をつむって、眠りに落ちた。

 だが気になるものはしょうがない。あの後をどうしても見てみたいと思った。もし見ることができるならあの少年も一目見たいし、あの壁の行方も気になる。スプレーを吹っかけられた後、もしかしたらその上から少年が絵を描いているという可能性を信じていたからだ。

 また放課後にでも覗いてみようと思い、掃除が終わって部活に行く前に倉庫へ向かった。しかし倉庫に入ろうとする私の背後から声がした。

「お前は、どこ行くんだ?」

 担任の先生だった。単調に話し、不気味な笑顔を作っている。出張へ行っていた先生は、戻っていた。

 私はどうしようかと考えたが、一つの手しか思いつかなかった。

「落とし物を…したので」

「前に入って来た時か?」

 まだ微笑みだけは崩さず、その微笑が不気味だった。

「あ、はい、そうです…」

「お前が帰った後見てみたけど、何にもなかったぞ」

 担任の先生は言う。だがそれ以上追求はしなかった。

「早く部活に行けよ。それと、もう倉庫に入るな」

 それだけを残し、去って行った。

 私はそんなことを言われても入りたいという思いはあった。そして倉庫のドアノブに手をかけた。だが回らない。カギがかかっているようだ。いつもここは開放しているはずなのだが、きっと担任によるものだろう。あそこに何があるわけでもないだろう。ただあの石に触れるだけだ。なぜ入ってはいけないのか。今は担任を恨むばかりだった。

 そうして部活に向かったのだが、打ち込めるはずもなく、ただぼんやりと空を眺めていたのと同じことだった。
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