世にも奇妙な話
 そして担任は言う。

「もういいだろ。早く出ろ」

 私は一度自分の持っていた石を見て、その石は担任がポケットに入れたものだと確信した。似ていたし、それにあれは確かに担任だった。だがあそこはどこだったのだろうか。それが気になった。

「先生。あそこはどこなんですか」

 私はまるで担任も私と同じような体験をしたように同等の視線だった。

「…早く出ろ。それを置いて」

 担任は起こっているように見えた。だから私はその言葉に従い、担任がカギを閉めている間、私はもう一度尋ねた。しかし返ってくる言葉はそっけなかった。

「そんなの聞いてどうする」

 いかにも起こっている様子だったが、私が何度もくどく尋ねると、担任から折れたようで、教えてくれた。

「お前、聞いたことはないか。ベルリンの壁って。十五年ぐらい前の話なんだが」

「ああ、どこかで聞いたことがあります」

「そうか。俺の授業で寝ている確信犯だからな」

 変なことを聞いてしまったようだ。ただ私が不利になった。それに恥ずかしい。私はすぐに話を切り替えした。

「あそこにいたのは、先生ですよね?」

「あれは…確かに俺だ」

 担任は止まり、私ではなくその反対の窓の外を見た。

「俺だが、あれは校長に頼まれたことだ。学校の教材らしいが、一回も使わずじまいだ」

「それなら今度使いましょうよ。あれに触れれば過去が見えるのでしょ」

 担任は笑い、だがそのことは却下された。

「過去が見れるからこそ、見ることができない。分かるか?冷戦当時の東ドイツ、あそこで起こったことは残酷極まりなかった。背景に付いた巨大勢力による支配、それが戦争を続けさせた理由だ。朝鮮戦争もまたそうだ。その大戦後の世界を見ることができる機会だが、お前にはその意味が分かったか?」
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