世にも奇妙な話
「そういえば、どうして彼女と別れたの?」五回目だというのに、こんな話題にしやすいことを聞いていなかった。しかし純一の気持ちを考えて、私の心の何かが、それをとがめていたのかもしれない。

「…ああ、たいしたことじゃないよ。というより、なんであいつがあんな態度をとったのかが分からない。俺、何にも悪いことなんかしてないし」純一は苦笑いをした。じつに分かりやすい苦笑いで、その表情からは理解しがたいというのがにじみ出ていた。

「それで、何があったの」

「そうだな…本当にたいしたことじゃないよ。聞いてても詰まんないと思うけど…聞きたい?」

「うん、聞きたい」

「…じゃ、言っちゃおうかな。ある後輩が、俺に告白したんだ。でも、俺ってその頃彼女がいたじゃん。だから断ったんだよ。でも、その子が何かかわいそうで、その日の帰りだけは、一緒に帰ってあげることにしたんだよ。それでさ、その帰り、彼女が俺とそ後輩が一緒に歩いているのを見たっていう口コミを聞いてさ、怒っちゃって。それで俺、そのことを弁解しようとしたんだけど、何か彼女は聞く耳持たずで、もうだめって感じで。でも、俺必死でメールで謝ったんだが、いつの間にか、杏ちゃんのところにメール送ってたみたいで。あのときは悪かったな」

「いいのよ。でも、何かこの出会いって、ロマンチックでいいじゃない」

「そうかもな。何かこの時だけ、奇跡を信じちゃうよな。俺達の出会いもそうだし」純一は今日一番の笑顔を見せた。そして話を続ける。「でも、その奇跡も今日まで、か」

「えっ」私はきょとんとした目で言った。「それって、どういうこと」

 純一は、しまった、といった顔をした。しかし、そのことを隠せないと言っているかのように唇を噛んだ。「実は…」
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