痴漢は犯罪です!!



電車は桜町駅を出ると、次の落合橋駅へと順調に走っている。


扉に押し付けられながら首が動く範囲で周りを見渡すと、皆黙って新聞を広げたり、携帯を触ったり、座って寝ていたりしている。


亜優美のお尻を触る手は一向に止める様子もなく、それどころか、スカートの中に手を入れようとしている。



(私の右手、下ろせるかな。)



亜優美の右手は胸の辺り、左手は手すりを掴んでいる。



『ご乗車ありがとうございました。落合橋です。』



アナウンスと同時に電車が止まると扉が開く。


また、たくさんの乗客が降りて行く。


その途端、今まで亜優美を触っていた手が急に消えてしまった。


亜優美も乗客が降りた事で腰辺りに余裕が出来たので右手を動かせるようになったが、もう、触っていた手がどれか分からない。



(くそっ…。)



少し悔しさをにじませながら、今度触られた時の為に、右手を腰の辺りに下ろしたまま、また乗り込んできた乗客に押された。


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