Snow&Cherry
連れていかれたのは、取調室ではなく、警察署の近くにあるカフェだった。


「何飲む?今日はおじさんの奢りだから!」


オレの前には、やる気の無さそうな45才ぐらいのおじさん。
警察官っていうより、ラーメン屋っぽい雰囲気のおじさんは、オレの前に名刺を置く。
おじさんは、中田というみたいだ。


おじさん………中田さんは、オレの前に、勝手に頼んだオレンジジュースを置くと、話始めた。

中田さんは、目の前の少年が小学生に見えているのだろうか。


「まぁ、聞いたと思うけどー。昨日、君のクラスメートが教室で死んだんだよ。」


平穏な昼下がり。
そんな言葉が似合うこのカフェで、中田さんは普通のボリュームでそう言った。

……死んだんだって事は、まだ殺人だってバレてないんだな、と一人で推理しながら、中田さんの言葉を待った。


「ま、包丁にも指紋ついてたし、隣に遺書もあったし。
ほぼ自殺だって確定してるけど、一応ね。」


中田さんは、がははと下品な声をあげて笑った。
不謹慎にも程がある。


「オレっ……僕は、今日提出だった数学のプリントを机の中に忘れたので、取りに言っただけです。」


オレがそう言うと、中田さんは興味無さげに相づちをうった。
そして、タバコを取り出すと、口にくわえて火をつける。

ふぅーっと煙を吐くと、じゃぁ良いや、と笑う。
代金は中田さん持ちらしいので、アイスコーヒーとサンドイッチを頼む。


中田さんの怪訝そうな顔を無視しながらサンドイッチを食べていると、脇に添えられていたポテトとトマトケチャップが見えた。

その赤い色を見て思い出すのは、昨日の光景。

全てを忘れたくて、サンドイッチを口の中に詰め込んだ。
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