Snow&Cherry
「ふー。食ったなー。」

あれから、スパゲッティ、ハンバーガー、オムライスと食べまくり、中田さんに「もう流石に止めてくれ」と言わせるまで食べたオレは、佐倉の家へと向かっていた。

前に佐々木が、佐倉ん家は公園の隣だと言っていたのを思い出したのである。
中田さんの話からすると、ハルは完璧に後片付けを終えた。

しかし、本人は?


家には入らなくても、ちらっと様子を見れるだけで良い。
そう思い、佐倉の家の前に立った。
すると…………。


「奈々のお友達……?」


後ろから、佐倉の母親らしい人が、買い物袋を下げた手で鍵を探しながら言った。
勿論「違います」なんて言えるはずもなく、はいと答えると、佐倉の母親は困ったような顔をして。


「奈々が部屋から出てこないのよ。クラスメートが死んだって聞いたんだけど、それが関係してるのかしら。」


オレに助けを求められても困るのだが、仕方がない。
家に上がらせてもらい、佐倉の部屋の前まで言った。


「佐倉?オレ、永瀬だけど。」


中にも聞こえるように大きな声で言うと、ドアが開いて、中に引き込まれた。

「永瀬っ………!」

佐倉は泣いていた。
格好も、林間学校で見たような、きちんとした私服ではなく、部屋着のままだった。

「どうした?」


オレが精一杯優しく言うと、佐倉は机を指差した。
そこには、昨日ハルが持っていたノートが置いてあった。

「朝起きたら、しまってあったはずのアレが、机の上に出ていたの。」


佐倉は震える声でそう言った。



多田が死んだことは、佐倉も知っている。
朝起きたら、ノートが机に出ていて、多田は死んだ。

そりゃ、混乱する。



「ね、明日香が死んだことと、何か関係してるの?!
あの日記にはっ…………!」


知ってるよ。
あの日記帳には……殺人計画が書かれてる。
多田は、それにそって死んだはずだ。


佐倉が一年前、夢見た通りに、多田は死んだ。
これが、佐倉の望んだ事だ。


「……関係無いよ。思い出してみ?昨日自分で出して忘れてたんじゃないのか?」


嘘も方便。
勉強なんて興味ないし、ことわざなんて特に分かんないけど、今だけはあやからせてもらう。

本当の事を言ったって、信じてもらえる訳がない。
二重人格だなんて、オレですら最初は疑っていた。


「……そういえば昨日、疲れてたからな。忘れてたかも。」

今はただ、佐倉がバカだったことに感謝しておこう。

「隣の公園って、春になると桜が綺麗なんだってな。10時位になると夜桜も見れるって言ってたし。春になったら見に来ようかな。」

それに引き換えハルは頭が良い。これだけ言えば、言いたいことは分かるだろう。

『今日の10時、隣の公園に来い。』


とりあえず、ハルと話をしなければならない。



ハル。契約はどこへいった?
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