Snow&Cherry
「困るんだよねー。急に呼び出されても。母親に言い訳するのは僕なんだよ。」

ハルは、困ったというより、めんどくさそうな顔をして、ベンチに座った。


「お前、契約違反だ。
オレはお前に、この事は佐倉に言うなと言ったはずだ。」


ハルは「言ったんじゃないし。」と、子供っぽい言い訳をする。
しかし、オレの雰囲気にやられたのか、「ごめんって!」と膨れっ面をしながら言う。


「あれは本当に忘れてただけ!朝になって仕舞おうと思ったら、僕より先にサクラが起きちゃってさ。」


ペロッと舌を出して笑うハルは、はっきり言って可愛い。
しかし、中身があれだと思うと、ただただ憎悪しか沸いてこない。


「それにしても、フルネームはやめたのか。」


オレがそう言うと、ハルは嬉しそうな顔をした。
そして、指をパチンとならすと、さすが永瀬瑞希!と笑う。

「佐倉奈々って、言いにくいでしょ?あ母音が三連続だしさ。それに、サクラってぴったりなんだよね。」


ハルはきゃははと、いたずらっ子のように笑った。
そして、オレにぐいっと顔を近づけてくる。




「桜の花言葉、知ってる?」



オレは、そういう乙女チックなものには疎い。
首を横に振ると、ハルは「桜でも沢山あるんだけどー。」と指を折りながら言った。






「桜の花言葉は……偽善。」







ハルは、冷たい声で言った。
そして、「サクラにぴったりでしょ?」と笑った。



そのまま家に入って行くハルを、オレはただ見送るしかなかった。



ハルが、誰を一番恨んでるのか、分からなくなった。
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