Snow&Cherry
「おはよう!」


登校中、歩きながら音楽を聞いていたオレの肩をトンっと叩いたのは、藤井だった。
ショートカットで、夏希という名前がよく似合う、明るい奴。

でも、藤井の目の下には、くまができているし、笑顔だって作り笑いだ。

無理もない。
藤井は、多田と三好と、ものすごく仲が良かったんだ。
親友が死んだら、こうもなるだろう。

オレも親友の安倍が死んだらって、考えるだけで嫌になる。


「おはよう。」

「なんだよ!朝から暗い奴だな!気分アゲてこうぜ?」

藤井は、声をあげて笑う。
周りの中3は、そんな藤井を、軽蔑したような目で見ている。


お前ら、藤井が泣くのこらえてんのもわかんねーのかよ!


と、怒鳴ってしまいたかったが、藤井の努力を水の泡にするわけにもいかないし、必死に怒りをこらえた。


「行こっ!遅刻するよ?」


藤井の笑顔を見てると、涙が溢れてくる。
それは、藤井が辛そうな顔を見せないようにしてるから。


でも本当は、藤井が一番泣きたいんだ。


「………おう。」



せめて隣にいよう。
オレは、藤井と一緒に登校することにした。
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