聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
これは恋だと。

自分はカイに、恋しているのだと。

いつのまにこんな恋しさが育っていたのかはわからない。だが今確かにリュティアは、カイに恋しているのだ。

―自分はライトに恋しているのではなかったのか。

リュティアは自分の気持ちをみつめる。

確かに自分はライトに恋をした。ライトへの想いは…華やかな花のような想いだった。今それはリュティア自身の手によって断ち切られ花は散り、枯れていた。恋は、終わっていたのだ。

それに比べてカイへの想いは、枯れることなく広がり続ける蔓草のような想いだった。庭園が緑を下地とするように、全ての土台となる大切な想いだった。

それは最近芽生えたものではなかった。

幼い頃からずっと育ち、広がり続けていた想いに、今やっと、リュティアは気づくことができたのだった。

リュティアはむっくりと寝台から体を起こした。

この気持ちを、伝えようと思ったのだ。

リュティアは天幕の出入り口をそっとくぐった。

仮設とはいえ女王の天幕であるから、ここは女王の起居する天幕を覆うように広い天幕がしつらえられた二重構造になっている。カイは外側の天幕の外にいるはずだ。

入口に立つ人影に、リュティアは話しかけた。

「カイ、あの…」
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