聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「…と、言うワケ。ね、姉様、ジョルデ?」

図書館の入口に、パールの背後からさらに二人の人影が現れた。

「ええ、このパールは本物よ」

言いながら、片目をつぶってみせる人影に、リュティアの目は釘付けになる。

頭頂部で軽く持ち上げた爽やかな黒髪。見る者の心を明るくする笑い。

「フレイア!」

リュティアは思わず声をあげていた。

「リュティア!」

フレイアは満面の笑顔で駆け寄ってくると、思いきりリュティアに抱きついた。

「無事でよかったリュティア! さらわれたって聞いて、心配していたのよ!」

「フレイア」

その声があまりにも懐かしくてリュティアは涙ぐみそうになる。

カイと二人で旅した季節が思い起こされて泣きたくなる。

「私たちが、ヴァルラムへ行くわ! そして虹のたもとで、宝玉をかざす! ね、パール」

「うん。僕のニセモノで、一騒動起こしちゃったからね。僕にも名誉挽回のために、何かやらせて。いいでしょ、乙女?」

こういうとき思わず宰相フリードを見るのは、女王として染みついた癖のようなものだ。

リュティアの視線を受けて、フリードは大きく頷いてくれた。

「カイは有力な対空戦闘要員だからな。行かせなくてすむならそれにこしたことはない」

「じゃあ、お願いします」

リュティアもカイを行かせたくなかったから、この申し出は渡りに船だった。
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