聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「セラフィム!? 待て、見せろ――」
アクスは背筋が凍りつくような気持ちでセラフィムの服の袖をまくりあげた。
「ひどい…どうしてこんな……」
そう言ったきりアクスが言葉を失うのは無理のないことだった。
セラフィムの左腕は肩から先が赤黒く変色しだらりと垂れさがっていた。その腕がもう二度と動かないであろうことは医療に知識のないアクスの目から見ても明らかだった。
ここはプリラヴィツェとヴァルラムの国境の橋。ついさきほどここでセラフィムと再会を果たしたアクスは、すぐさまセラフィムの様子の異常に気が付いたのだった。
セラフィムの表情は静かだ。そのかたわらにたたずむフューリィがひっきりなしにしゃくりあげ涙をこぼし続けているからいっそうその静かさが際立つ。
「これしか、方法がなかったのです。私の腕一本の力を丸ごと王都に置いてくるしか…」
「うっく、ひっく、うぅ、ひどい、知ってたら、絶対、止めたのに、っく」
「…………」
セラフィムの壮絶な選択に、アクスは思い知る。
今が戦いの時なのだと。すべてを賭けて戦う時なのだと。
それぞれが、それぞれに、すべて賭けて戦わなければ、生き抜けない時なのだ。
だからアクスは目をそらさずにセラフィムをみつめた。彼の決意のすべてを見届けようと思った。
アクスの瞳には、腕を失った今のセラフィムが、今までのどんなセラフィムよりも力強く見えた。
アクスは背筋が凍りつくような気持ちでセラフィムの服の袖をまくりあげた。
「ひどい…どうしてこんな……」
そう言ったきりアクスが言葉を失うのは無理のないことだった。
セラフィムの左腕は肩から先が赤黒く変色しだらりと垂れさがっていた。その腕がもう二度と動かないであろうことは医療に知識のないアクスの目から見ても明らかだった。
ここはプリラヴィツェとヴァルラムの国境の橋。ついさきほどここでセラフィムと再会を果たしたアクスは、すぐさまセラフィムの様子の異常に気が付いたのだった。
セラフィムの表情は静かだ。そのかたわらにたたずむフューリィがひっきりなしにしゃくりあげ涙をこぼし続けているからいっそうその静かさが際立つ。
「これしか、方法がなかったのです。私の腕一本の力を丸ごと王都に置いてくるしか…」
「うっく、ひっく、うぅ、ひどい、知ってたら、絶対、止めたのに、っく」
「…………」
セラフィムの壮絶な選択に、アクスは思い知る。
今が戦いの時なのだと。すべてを賭けて戦う時なのだと。
それぞれが、それぞれに、すべて賭けて戦わなければ、生き抜けない時なのだ。
だからアクスは目をそらさずにセラフィムをみつめた。彼の決意のすべてを見届けようと思った。
アクスの瞳には、腕を失った今のセラフィムが、今までのどんなセラフィムよりも力強く見えた。