聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
3
「姉様! 姉様、しっかりして!」
「フレイア、大丈夫か!」
耳元でわんわんと響くのは、パールとジョルデの声だ。
―なんだっていうのよ。
肩を抱え起こされて、フレイアは自分が地面に倒れこんでいたことに気が付く。
どうして自分は倒れたのだろう。
ゆっくりと顔を上げ、フレイアは世界の異変に気が付く。
黒い髪、黒い服、黒い列、黒い棺――
いったいどうしたというのだろう。なぜ世界から、色が失われてしまったのだろう。
「パール、…変なの、色が……色、が…」
その時黒一色の世界に色彩が生まれるのを、フレイアの瞳はとらえた。
鮮烈な赤。
棺にそっと捧げられた花の色。
血のイメージ…。
それがフレイアの心臓をわしづかみにする。
―『遺体はお見せできません。とてもお見せできる状態ではないのです』
脳裏によみがえる声が誰の声かわからない。だが先ほど確かに聞いた。聞いたのだ。
―遺体…?
体がぶるぶる震えだす。
見たくないのに、見えてしまう。
血色の花の下、黒い棺に刻まれた名前―――。
“エライアス”。そして…
“ザイド”――。
「うそよ――――――!!」
「フレイア、大丈夫か!」
耳元でわんわんと響くのは、パールとジョルデの声だ。
―なんだっていうのよ。
肩を抱え起こされて、フレイアは自分が地面に倒れこんでいたことに気が付く。
どうして自分は倒れたのだろう。
ゆっくりと顔を上げ、フレイアは世界の異変に気が付く。
黒い髪、黒い服、黒い列、黒い棺――
いったいどうしたというのだろう。なぜ世界から、色が失われてしまったのだろう。
「パール、…変なの、色が……色、が…」
その時黒一色の世界に色彩が生まれるのを、フレイアの瞳はとらえた。
鮮烈な赤。
棺にそっと捧げられた花の色。
血のイメージ…。
それがフレイアの心臓をわしづかみにする。
―『遺体はお見せできません。とてもお見せできる状態ではないのです』
脳裏によみがえる声が誰の声かわからない。だが先ほど確かに聞いた。聞いたのだ。
―遺体…?
体がぶるぶる震えだす。
見たくないのに、見えてしまう。
血色の花の下、黒い棺に刻まれた名前―――。
“エライアス”。そして…
“ザイド”――。
「うそよ――――――!!」