聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「―泣き虫じゃ、ないもの。泣いたりしない。だって私は、信じてる。あいつは剣に誓ったんだから、それを守らないはずがない。あいつは生きてる。信じてる、信じてるのよ」

「姉様……」

それはフレイアの切実な願いだった。

―心の奥底から確かに湧き上がってくるものを、信じたい。泣くより、信じたい。

「敵襲―――!! 敵襲―――!!」

耳をつんざく叫び声に、はっと、二人は顔を上げた。

「フレイア王女、こちらにいらっしゃいましたか! 大変です! アタナディール軍約3000が門を破り王都内に侵入! 魔月との戦いと葬儀の混乱に乗じ我が国を落とそうとの魂胆であると思われます」

「なんですって!?」

フレイアはすぐさま駆け出していた。

もうその瞳は弱々しく伏せられてはいなかった。

信じたい。信じている。だから、強くなれる。それだけで、強くなれるのだった。
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