聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「アタナディール軍の背後より新たな勢力約1000が登場!」

「敵!? 味方!?」

「わかりません!」

フレイアはぎりぎりと歯ぎしりする。

もしも敵であれば絶体絶命のピンチだ。ただでさえ押されているのにこれ以上数が増えればどうなるか…。

しかしその心配は杞憂であった。第三の勢力1000は槍でもって、背後から次々とアタナディール軍を屠りはじめたのだ。彼らは漆黒の衣装に覆面の集団だった。しかし何者であろう。本当に味方なのだろうか。

最前線槍の広場に姿を現した覆面の男たちに、フレイアは身構える。

その時だった。

フレイアめがけてまっすぐに何かが飛んできた。

それは投擲用(とうてきよう)の槍であった。ジョルデの反応は一拍遅れた。彼女も覆面たちに一瞬気を取られていたのだ。ジョルデが振り下ろした剣のわきをくぐりぬけ、槍がフレイアに迫る――!

「フレイア!!」

ジョルデの悲鳴と、目の前で金属音と共に火花が散るのとはほぼ同時だった。

槍は弾かれていた。一人の覆面の男の手にしたひらめく槍によって。

フレイアをかばうようにたちはたがった覆面の男の背中を、フレイアは見上げる。

それだけで、わかってしまった。

なぜわかったのだろう。覆面に覆われ顔は見えず、髪も頭巾に隠され、ましてや男はフレイアに背中を向けていたのだ。それなのに、わかった。

きっと、心の奥底から確かに湧き上がってくるものを、信じていたからだ。だから、わかったのだ。

彼が、――――。
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