聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「リュー」
呼び声が聞こえたとき、リュティアははじめて、自分が泣きそうなほどひどく切迫していることに気が付いた。
その声の響きが、その声に宿る優しさが、リュティアの追いつめられた心を浮き彫りにしたのだ。
声の主を探して、リュティアは振り返った。
そこに、彼がいた。
夜風に結い上げた黒髪をなびかせ、護衛官の制服に身を包んだその立ち姿。
「カイ――」
リュティアは辛くてまともに彼を見られないからすぐに視線を落としてしまう。けれど確かに感じられるその気配だけで、恋しさがこみあげてくる。
「リュー、戦ってはならない。ライトが〈光の人〉なんだ。絶対に、戦ってはならない。それを言いに来た…」
きっと今、夜風がカイの髪を揺らしているだろう。それを見たい。リュティアはそう思った。それだけを想っていたかった。
「いいえ、戦います。戦うしかないのです。カイだって、わかっているでしょう?」
「わからない。他に、方法があるはずだ」
「私が………。ライト様と、結ばれる方法があると…?」
リュティアはこの言葉を絶望しながら紡いだ。カイは、それを望むのかと。
カイもこの言葉を絶望しながら聞いた。リュティアは、それを望むのかと。
「そう…だ…」
そう答えるカイの声はひどく苦しそうに聞こえた。だからリュティアはわずかに顔を上げる。
呼び声が聞こえたとき、リュティアははじめて、自分が泣きそうなほどひどく切迫していることに気が付いた。
その声の響きが、その声に宿る優しさが、リュティアの追いつめられた心を浮き彫りにしたのだ。
声の主を探して、リュティアは振り返った。
そこに、彼がいた。
夜風に結い上げた黒髪をなびかせ、護衛官の制服に身を包んだその立ち姿。
「カイ――」
リュティアは辛くてまともに彼を見られないからすぐに視線を落としてしまう。けれど確かに感じられるその気配だけで、恋しさがこみあげてくる。
「リュー、戦ってはならない。ライトが〈光の人〉なんだ。絶対に、戦ってはならない。それを言いに来た…」
きっと今、夜風がカイの髪を揺らしているだろう。それを見たい。リュティアはそう思った。それだけを想っていたかった。
「いいえ、戦います。戦うしかないのです。カイだって、わかっているでしょう?」
「わからない。他に、方法があるはずだ」
「私が………。ライト様と、結ばれる方法があると…?」
リュティアはこの言葉を絶望しながら紡いだ。カイは、それを望むのかと。
カイもこの言葉を絶望しながら聞いた。リュティアは、それを望むのかと。
「そう…だ…」
そう答えるカイの声はひどく苦しそうに聞こえた。だからリュティアはわずかに顔を上げる。