聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「…違う。そんなことを言いたいんじゃない。そうじゃなくて…」

カイがくしゃりと髪をかき乱したのが見える。ただそれだけのしぐさで、リュティアの胸は騒ぐ。

「光神のお告げなんて、でたらめだ。ただ見ているだけの、勝手な神じゃないか」

リュティアはこのせりふに、わずかに傷ついた瞳にならずにはいられなかった。

「私が聞いたお告げを…信用できないということですか」

「そうじゃない――!」

カイが声を荒げる。せめて優しい言葉を掛け合いたいのにどうしてこんな雰囲気になってしまうのか、リュティアにはわからない。

「そうじゃないんだ。戦いなんてやめろ。やめてくれ。最後の最強の力なんていらない。〈光の人〉になんて、会わなくていい。私が絶対にリューを守るから、だから…」

「この運命を哀れんでそう言っているのですね…」

「違う、哀れんでなんていない。そうじゃなくて、私は、お前が…!」

カイはそこで言葉を選ぶように間を置いた。

「心配、なんだ…」

そう言ったきり、カイは語るべき言葉を見失ってしまった。
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