聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
2
もう幾度、朝が戦う二人を迎え、夜が戦う二人を包んだのだろう。
時間の感覚など、二人にはとうになかった。
力は完全に互角。
それぞれ浅い傷を体中に負っていたが、致命傷はない。
ライトは剣をぶつけるたびに自分の中で膨らむ、相反する想いを感じていた。
聖乙女を殺したいという渇望。
聖乙女を愛しているという感情。
彼女をこんなにも殺したいのに、こんなにも守りたい。
彼女の存在だけが、自分を揺り動かす。
『あなたのことが、好きなのです…!』
そう彼女に告白されたとき、なぜ自分が怒りを感じたのか、今ならわかる。
惹かれていたからだ。
ふと、闇神も同じなのではないかとライトは思った。
なぜ闇神が〈光の人〉を殺したのか、ライトにはわかる気がした。
闇神は、二人に怒りを感じたのだ。惹かれていたからだ。二人の何かに。
いったい、何に――?
リュティアの息遣いがすぐそばで聞こえる。躍るリュティアの桜色の髪がさらりと腕にあたる。彼女の強いまなざしがまっすぐに自分を見据えている。そのすべてにこみあげる愛しさを感じながら、ライトは自分に問いかける。
いったいいつから、こんな気持ちが育ち始めていたのだろうと。
地竜に襲われていた彼女を救ったのは、ただ腕試しがしたかったからだ。地竜の攻撃から彼女を抱いて守ったのは、ほんの気まぐれだ。稲妻の力で地竜を倒したあと、彼女に歩み寄った時…
あの時だ。
彼女はぽろぽろと涙をこぼしていた。ライトはあの時すでに、彼女に惹かれはじめていた。
あまりにも美しい彼女の涙に。それが宿す感情に。
それはいったい、なんという感情だろう?
―わからない。けれど確かにあの日から、想いは始まった。
伝えることのできない、この想いは。
決して伝わらないだろう、真実の気持ちは。
時間の感覚など、二人にはとうになかった。
力は完全に互角。
それぞれ浅い傷を体中に負っていたが、致命傷はない。
ライトは剣をぶつけるたびに自分の中で膨らむ、相反する想いを感じていた。
聖乙女を殺したいという渇望。
聖乙女を愛しているという感情。
彼女をこんなにも殺したいのに、こんなにも守りたい。
彼女の存在だけが、自分を揺り動かす。
『あなたのことが、好きなのです…!』
そう彼女に告白されたとき、なぜ自分が怒りを感じたのか、今ならわかる。
惹かれていたからだ。
ふと、闇神も同じなのではないかとライトは思った。
なぜ闇神が〈光の人〉を殺したのか、ライトにはわかる気がした。
闇神は、二人に怒りを感じたのだ。惹かれていたからだ。二人の何かに。
いったい、何に――?
リュティアの息遣いがすぐそばで聞こえる。躍るリュティアの桜色の髪がさらりと腕にあたる。彼女の強いまなざしがまっすぐに自分を見据えている。そのすべてにこみあげる愛しさを感じながら、ライトは自分に問いかける。
いったいいつから、こんな気持ちが育ち始めていたのだろうと。
地竜に襲われていた彼女を救ったのは、ただ腕試しがしたかったからだ。地竜の攻撃から彼女を抱いて守ったのは、ほんの気まぐれだ。稲妻の力で地竜を倒したあと、彼女に歩み寄った時…
あの時だ。
彼女はぽろぽろと涙をこぼしていた。ライトはあの時すでに、彼女に惹かれはじめていた。
あまりにも美しい彼女の涙に。それが宿す感情に。
それはいったい、なんという感情だろう?
―わからない。けれど確かにあの日から、想いは始まった。
伝えることのできない、この想いは。
決して伝わらないだろう、真実の気持ちは。