聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
3
カイはとびかかるように襲いかかってきた悪魔の魔月を、剣で上から下へ斬りおろした。
返り血ですでに彼の衣は真っ赤に染まり、手は血でぬめって何度も剣の柄を握りなおさねばまともに構えることもできない。
矢はとうに尽きた。
剣も数えきれない魔月を斬ったために刃こぼれがひどい。けれど、カイは武器を変えるためにここを離れるつもりはなかった。
カイはずっと、リュティアとライトが戦う結界のそばにいた。近づいてくる魔月と戦いながら、一睡もせずに、霧に包まれた結界をみつめていた。
ちょうど朝日がのぼってくる時刻だった。
「光…何が光の神だ」
カイは光神を呪った。
空を、大地を、魔月を呪った。
こんな運命を愛する少女に強いる全てを呪った。
―なぜ、愛し合う二人が命を奪い合わなければならない…!?
答えを求めるように、カイは空を振り仰ぐ。
もう何日も、絶え間なく聖なる力と闇の力が激しくぶつかりあっている空。
その空が、急に凪いだ。
光が勝ったのではない。闇が勝ったのでもない。ぽっかりと、光と闇に分離し、その激突が止んだのだ。
カイの直感が告げた。
決着が着くのだと。
さらりと絹の衣が流れるように、結界が解けたのがわかった。
リュティアとライトを包んでいた霧が晴れていく…。
カイは剣を構えた。
絶対にリュティアを守ると決めていた。
カイの目に、数日ぶりに見る愛しい少女の姿が飛び込んでくる。
この少女を守るためならライトなど殺せる。殺して見せる。そう思っていた。
それなのに。
それなのにカイは――
剣を突きの形に構え、駆け出すリュティアを見た瞬間、カイの体は、勝手に動いていた。
返り血ですでに彼の衣は真っ赤に染まり、手は血でぬめって何度も剣の柄を握りなおさねばまともに構えることもできない。
矢はとうに尽きた。
剣も数えきれない魔月を斬ったために刃こぼれがひどい。けれど、カイは武器を変えるためにここを離れるつもりはなかった。
カイはずっと、リュティアとライトが戦う結界のそばにいた。近づいてくる魔月と戦いながら、一睡もせずに、霧に包まれた結界をみつめていた。
ちょうど朝日がのぼってくる時刻だった。
「光…何が光の神だ」
カイは光神を呪った。
空を、大地を、魔月を呪った。
こんな運命を愛する少女に強いる全てを呪った。
―なぜ、愛し合う二人が命を奪い合わなければならない…!?
答えを求めるように、カイは空を振り仰ぐ。
もう何日も、絶え間なく聖なる力と闇の力が激しくぶつかりあっている空。
その空が、急に凪いだ。
光が勝ったのではない。闇が勝ったのでもない。ぽっかりと、光と闇に分離し、その激突が止んだのだ。
カイの直感が告げた。
決着が着くのだと。
さらりと絹の衣が流れるように、結界が解けたのがわかった。
リュティアとライトを包んでいた霧が晴れていく…。
カイは剣を構えた。
絶対にリュティアを守ると決めていた。
カイの目に、数日ぶりに見る愛しい少女の姿が飛び込んでくる。
この少女を守るためならライトなど殺せる。殺して見せる。そう思っていた。
それなのに。
それなのにカイは――
剣を突きの形に構え、駆け出すリュティアを見た瞬間、カイの体は、勝手に動いていた。