聖乙女（リル・ファーレ）の叙情詩～奇跡の詩～

２

どすんと重い木箱を置き、フレイアは満足そうに目の前にそびえる城壁を見上げた。

修復されたばかりなのであろう、近くで見れば見るほど綺麗な城壁だ。白大理石でできているらしく、全体に蔓草と花の模様が彫り込まれている。さすが永久なる花園の城壁といったところか。

けれど、確かに綺麗ではあるものの、ヴァルラムのいかつい城壁よりいかにも脆そうで、高さも低いのは事実だった。

―この程度の城壁なら私の脚力でひとっとびよ！

とフレイアは思った。

しかし結果は今彼女が額に貼り付けた絆創膏が雄弁に物語っている。見事に額を打ちつけ、地面に伸びる結果になったのである。『訓練、サボり過ぎたかなぁぁ～』とは目を回しながらの彼女の言である。

―というわけで、木箱を用意して、再挑戦だ。

西日が長い影を作る時刻だった。

フレイアには夜闇に乗じるという発想がなかった。

白昼堂々、正々堂々―とは言えないかも知れないがそんな細かいことはどうでもいい―がモットーなのだ。彼女はこの計画に燃えていた。結局言われたとおり夕刻になったからとあの苦い薬をちゃんと飲みほした偉すぎる自分は、少しくらい自由にやんちゃをしても許されると彼女は思っていた。

「よっと、これで今度こそ、登れるはず」