聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「あんたはパールの――偽物よ!!」

フレイアは言い切った。言い切ることができた。

確信していたのだ。

コイツはパールではない、と。

魔月と交信しているところを見たからではない。ちがうのだ。ちがう、もっと…確かに心の奥底から湧き上がってくる何かが、教えてくれるのだ。力を持つのだ。

確かにコイツは見事にパールを演じていた。二人しか知らないはずの記憶も、よく知っていた。しかし、細かいところが決してパールとは思えなかった。

例えば…風邪だ。フレイアが最初におかしいと思ったのはそこだった。

フレイアの体調に、パールはいつも気を使ってくれていた。本人もろくに気づいていないような小さな風邪にまで気付いては、心配してたくさんの滋養のつく食べ物を持ってくるようなそんな子だった。それなのにこれほどひどく風邪をひいているフレイアの様子にまったく構うことがなかった。大丈夫の一言も、気付いた素振りさえなかったのだ。

次に、セーターだ。いつものパールなら、自分で言うのもなんだがあれほどへたなセーターを贈ったら、『姉様、いくらなんでもこれは、ひどすぎます。着られません』と突き返すはずだった。いつもフレイアは、パールのそんな反応すらも愛しくて、ついまた、新しいセーターを編もうとしてしまう。それなのにこいつは喜んで着たではないか。

さらに、ジュースだ。面会室で二人に出されたリンゴのジュースはパールの大好物で、いつも一息で飲み干してしまうというのに、今日は一口も口をつけずに席を立った。

そして最後、決定打となったのが――

フレイアは怒りのため圧し殺した声を出した。

「ひとつだけ、教えておいてあげるわ。私とパールの大切な思い出に踏み込んで、踏みにじったつもりでも、表面だけじゃなんにもならないのよ。果物はね、鳥や虫や人に食べられて初めて、遠くまで種子を運べるのよ。優しすぎてなかなか果物を口にしなかったあの子は、それを知って果物をたくさん食べるようになったの!! そんなこともわからずにパールを騙ろうなんて、百年早いわ!! この、偽物!!」

フレイアは信じていた。

確かに心の奥底から湧き上がってくるものを信じていた。それが真実だって見抜くのだと!
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