聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「我らの祈り、どうかあなた様の御心に届きますよう…」

この祈りの部屋に集まった女たちは十数名。

彼女らの頬が皆赤いのは、あちこちに置かれた暖房器具火鉢の熱さのせいばかりではない。敬虔な想いが彼女らの内側から外側へとあふれ出ているのだ。

彼女らが今想うのはたったひとりの神。

―その名は“陽雨神(よううしん)”。

リュティアも女たちに倣(なら)って手を合わせ、目を閉じて祈る。

―どうかこの祈り、届きますように…“陽雨神”様に…。

陽雨神。それはここ、ピティランドの人々が信じる唯一神である。

名前の通り、人々が生きるためにもっとも大切にする天候を司るとされている。陽雨神が笑えば晴れ、泣けば雨になるという。

神と言えば光神と闇神しか知らないリュティアにとって、女たちと同様に新たなその神を信じ祈るのは、容易ではないはずだった。

だがリュティアは今、心の底から陽雨神を信じ、祈っている。それは彼女が陽雨神を実際に目にしたからにほかならない。

そう、リュティアとアクスの二人は今からちょうど一月前、ピティランドの神陽雨神に会ったのだ。

その時のことを、祈りながらリュティアは思い返した。
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