聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
その時アクスの背丈ほどの、宝石のように青く優しく光る大きな星の影から、ゆっくりと歩み出てくる金の人影があった。

『サーレマー…? 違うな、誰だ、我が世界に踏み込む者は』

その人のあまりのまばゆさに、アクスもリュティアもしばし声をなくし、ただ目を瞠るばかりだった。

それほどにその人は神々しく美しかった。

地につくほどに長い黄金の髪は太陽の輝きそのもの、青く輝く双眸は星の輝きそのもの。二人は同時に同じ存在を連想した。

―光神様。

そして二人はさらなる驚きに、瞬きを忘れる。

この美しい人の白皙の頬を、はらはらととめどなく涙がこぼれていたからだ。

先に我に返ったのはアクスだった。アクスは突然その場に跪き、最上級の臣下の礼をとった。

『陽雨神様。初にお目にかかります、私はピティランドのプレニア族、アクスと申す者』

アクスのその声を聞いて、リュティアも我に返った。この方が陽雨神さまなのだと理解した。慌ててリュティアも跪いたところで、陽雨神の視線がアクスではなく自分に向けられていることに気がつく。

『―母上。母上ではないか』

陽雨神は間違いなくリュティアを見つめながら、驚いたような表情でそう言った。

『えっ!?』

これにはアクスとリュティア、同時に思わず声を上げた。

『帰ってほしい。たとえ母上と言えど、今は誰とも会いたくないのだ』

陽雨神はぷいっとそっぽを向いた。それはその美しい外見に似合わぬ子供のような仕草であった。
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