聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
今やリュティアと陽雨神の二人はまともに目を開けていることができなかった。

真っ白な光が星々から放たれ、大地もくらげもすべてがきらきらとまばゆく輝いている。

「これはいったい……!?」

「祈りです。皆の祈りの力です、陽雨神様!!」

リュティアの満面の笑みが、かろうじて見える。

これほどの祈りの力が集まるなど、陽雨神にはにわかに信じられなかった。

「なぜだ……!?」

問いかけに、世界が答えた。教えてくれた。

サーレマーの祈りが、想いが、願いが、この光をもたらしたのだと。

サーレマーは、約束を守ったのだと。

それが、サーレマーの真実だと。

陽雨神の胸がいっぱいになる。

切なさと愛しさではちきれそうになる。

「サーレマーの真実が…やっとわかった……」

―聞いてくれサーレマー。

―大嫌いなんて嘘だ。

―大好きだ。大好きだ。大好きだ…。

陽雨神の想いを光が包む。想いが光ととけこんで、広がっていく。

「やっとわかった…母上の言ったこと…ひとりじゃないと…皆が確かに、私を助けてくれる…こんなに助けてくれている」

リュティアが頷く。光の中、何度も何度も。

「ありがとう、母上」

陽雨神は輝く世界の中、ゆっくりと、微笑んだ。

彼から爽やかな風がふぅわりと流れた。風が運ぶ。光を運ぶ。世界へ。

彼の国の雲が途切れ、雨がやみ、光が差したのを、陽雨神は感じることができた。そして遥かエルラシディアの空に今、鮮やかに虹かかかったのを、視ることもできた。

この虹は、消えない虹。

エルラシディアに聖なる力をもたらす虹。
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