聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
2
ゆっくりと浮上する意識の中、リュティアは今まで見ていたものが夢だと気がつく。
なんてリアルな夢だろう。
夢の中で自分はリュリエルと呼ばれていた。
リュリエルとヴィルトゥスと言えば、“星麗の騎士”だ。自分は星麗の騎士の夢を見ていたのか。だが自分の知るストーリーと微妙に違っているのはなぜだろう。
リュリエルは王国の姫君ではあったが星麗ではなかった…。婚約者はあんなに冷たくなかったし、詩人の友人はいなかった…。
そう思いながら、リュティアは右手の痛みに気がつく。その痛みが自分の意識を強制的に浮上させたことに気がつく。
―痛い。いったいなんだというのだ。
「ん……」
呻いて、ついにリュティアは瞼を上げた。すると――
「お目覚め、聖乙女(リル・ファーレ)」
まだぼんやりとかすむ視界に飛び込んできたのは、見慣れたパールの顔だった。
リュティアはパールと本を読んでいたことを思い出した。ということは、自分は本を読みながら眠ってしまったのだろうか。それは恥ずかしい。
「パール、ごめんなさい、私……」
パールの頬に伸ばそうとした手がガシャリと鳴った。重い金属音にリュティアは思わず手元を見る。
リュティアは我が目を疑った。
リュティアの手を、重々しい金属の鎖が拘束していたのだから。
「え………?」
しかも、右手の甲からは血が流れている。パールがそのすぐそばで鋭利な刃物を握っている。状況が理解できず、リュティアは固まった。
なんてリアルな夢だろう。
夢の中で自分はリュリエルと呼ばれていた。
リュリエルとヴィルトゥスと言えば、“星麗の騎士”だ。自分は星麗の騎士の夢を見ていたのか。だが自分の知るストーリーと微妙に違っているのはなぜだろう。
リュリエルは王国の姫君ではあったが星麗ではなかった…。婚約者はあんなに冷たくなかったし、詩人の友人はいなかった…。
そう思いながら、リュティアは右手の痛みに気がつく。その痛みが自分の意識を強制的に浮上させたことに気がつく。
―痛い。いったいなんだというのだ。
「ん……」
呻いて、ついにリュティアは瞼を上げた。すると――
「お目覚め、聖乙女(リル・ファーレ)」
まだぼんやりとかすむ視界に飛び込んできたのは、見慣れたパールの顔だった。
リュティアはパールと本を読んでいたことを思い出した。ということは、自分は本を読みながら眠ってしまったのだろうか。それは恥ずかしい。
「パール、ごめんなさい、私……」
パールの頬に伸ばそうとした手がガシャリと鳴った。重い金属音にリュティアは思わず手元を見る。
リュティアは我が目を疑った。
リュティアの手を、重々しい金属の鎖が拘束していたのだから。
「え………?」
しかも、右手の甲からは血が流れている。パールがそのすぐそばで鋭利な刃物を握っている。状況が理解できず、リュティアは固まった。