聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
「よかったな、母上。これで〈光の道〉のゲートが開いた。世界は再び〈光の道〉の聖なる風に守られるだろう」

リュティアはきょとんと目を丸くした。

「光の…道、とは?」

「それも忘れたのか母上は。〈光の道〉とはこの世界に“光”をもたらす核(レンズ)となる聖域(スポット)。かつて幾千万の森にて〈光の人〉ヴィルトゥスにより守られた場所。今のフローテュリアにある。かつて闇神から守るために〈光の道〉に我というゲートをつくり危機を逃れたのは、リュリエル、あなたではないか」
リュティアの頭は話についていけずに混乱を極めた。

「ち、ちょっと待ってください、私が、リュリエル? それって夢の? それに、ヴィルトゥス様、が、〈光の人〉? フローテュリアに〈光の道〉が……」

「リュリエルが死の間際その身に光神を降臨させ、我と、我の存在を支える祈りを集めるためにピティランドの人々を、つくったのではないか。あなたはその生まれ変わりだ。だから我はあなたを母上と呼ぶのだぞ?」

「…………………」

リュティアは言葉を失くした。

頭の混乱のためだけではなかった。陽雨神の言葉によって鮮やかに蘇った記憶の波に圧倒されていたのだ。
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