聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
リュリエルは幾千万の森でヴィルトゥスと過ごしたのだ。みつめあう二人…。

―ちょっと待て。

二人を包む甘い空気に、気付かないカイではなかった。

―ヴィルトゥスは、リュリエルの恋人だったのか!?

『アンジュのリュリエル姫の生まれ変わりこそ、聖乙女です。そしてヴィルトゥスの生まれ変わりが、〈光の人〉なのです』

『……………』

カイは心中穏やかでなかった。どうして穏やかでいられよう。これから探そうとする光の人は、リュティアの前世からの恋人だというのだから。

『カイ、グランディオムへ急いでください。そこから〈光の人〉の気配がします』

―え、グランディオムから…!?

『一刻も早く聖乙女と〈光の人〉を出会わせなければなりません。戦いを終わらせるために。注意すべきは、黄金の髪に覚醒した姿と出会えなければ意味がないということです。だから、もう出会うには出会っているよく知った人物の可能性もあります。急いでグランディオムへ…………』

そこでカイは浅い眠りから覚めた。

グランディオム、その言葉がまだ頭の中で鳴り響いていた。

カイは茫然自失といっていい状態だった。短時間で与えられた情報の多さのせいではない。それを解析するめまぐるしい頭の中のせいでもない。それらからはじき出された恐ろしい予想が、カイにただ言葉もなく瞬きだけを繰り返させたのだ。

『目が覚めたかカイ。そろそろ突入だ』

アクスのその言葉でカイは現実に立ち返った。
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