聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
―似ている、とライトは思う。夢を見ながら思う。ヴィルトゥスのこの感情は、自分が聖乙女に感じる気持ちにそっくりだ。
それは二人が数か月共に過ごすうちにしだいに確かなものに育っていった。ライトにはその様子を手に取るように思い返すことができる。
あっというまに時は過ぎた。二人は指先に触れることすらなかったが、互いをいたわり合い、互いに光を与え合い、互いへの想いをどうしようもないほどに大きく育ててしまった。
けれど別れは容赦なく訪れるのだ。
『お別れを…言わなくてはなりません。アンジェラスに、帰らなければ』
リュリエルが突然そう切り出したのは、満開になった野桜が風に儚く散る季節だった。
はらりはらりと舞う花びらを頬や髪に受けながら、リュリエルはうつむいている。
ヴィルトゥスは胸の中に咲いていた桜色の優しい花までもが、散ってしまうような錯覚をおぼえた。
いつかはこんな日が来る。それはヴィルトゥスにもわかっていたことだった。わかっていたことだったはずだ。
『…そうか』と平静を装った声はかすれていた。
『…ついにこの剣を使えるようにしてやれなかったな』
リュリエルは数か月徹底的にヴィルトゥスから学んだが、一度たりとも青い光の剣を出すことができなかったのだ。
それは二人が数か月共に過ごすうちにしだいに確かなものに育っていった。ライトにはその様子を手に取るように思い返すことができる。
あっというまに時は過ぎた。二人は指先に触れることすらなかったが、互いをいたわり合い、互いに光を与え合い、互いへの想いをどうしようもないほどに大きく育ててしまった。
けれど別れは容赦なく訪れるのだ。
『お別れを…言わなくてはなりません。アンジェラスに、帰らなければ』
リュリエルが突然そう切り出したのは、満開になった野桜が風に儚く散る季節だった。
はらりはらりと舞う花びらを頬や髪に受けながら、リュリエルはうつむいている。
ヴィルトゥスは胸の中に咲いていた桜色の優しい花までもが、散ってしまうような錯覚をおぼえた。
いつかはこんな日が来る。それはヴィルトゥスにもわかっていたことだった。わかっていたことだったはずだ。
『…そうか』と平静を装った声はかすれていた。
『…ついにこの剣を使えるようにしてやれなかったな』
リュリエルは数か月徹底的にヴィルトゥスから学んだが、一度たりとも青い光の剣を出すことができなかったのだ。