聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
自分は何をしているのだろう。
言わなければならないことがあった。
伝えなければならないことがあった。
ヴィルトゥスはゆっくりと手を伸ばす。彼女の頬を滑り落ちる美しいしずくに手を伸ばす。
『リュリエル、俺もお前を……』
それからのことを、ヴィルトゥスははっきりと覚えていない。
ただ背中に真一文字に激痛が走り、目の前が真っ赤になって――砂利が口の中に入ってざらざらと不快だった。そのことで自分が地面に突っ伏しているのだと気がつく。
なぜ…?
―斬られたのだ。
そう理解した時、リュリエルの恐怖に震えた声が耳に届いた。
『レト様…!? ヴィルトゥス様を、ああ、ヴィルトゥス様…!!』
『この売女!! よくも俺を裏切ったな!! お告げを理由にしてこんな男と密会しやがって!! 来い!! 二度と逃げ出せないようにお前を塔に閉じ込めてやる』
『いや! 離して! うっ』
リュリエルの絶叫がくぐもった。
―リュリエルが殴られた?
ヴィルトゥスの頭はこの異常事態にめまぐるしく反応したが、体がついていかない。
『いや! ヴィルトゥス様! いやぁぁっ』
リュリエルの声が遠ざかる。
『リュリエル…!! リュリエル――――!!』
言わなければならないことがあった。
伝えなければならないことがあった。
ヴィルトゥスはゆっくりと手を伸ばす。彼女の頬を滑り落ちる美しいしずくに手を伸ばす。
『リュリエル、俺もお前を……』
それからのことを、ヴィルトゥスははっきりと覚えていない。
ただ背中に真一文字に激痛が走り、目の前が真っ赤になって――砂利が口の中に入ってざらざらと不快だった。そのことで自分が地面に突っ伏しているのだと気がつく。
なぜ…?
―斬られたのだ。
そう理解した時、リュリエルの恐怖に震えた声が耳に届いた。
『レト様…!? ヴィルトゥス様を、ああ、ヴィルトゥス様…!!』
『この売女!! よくも俺を裏切ったな!! お告げを理由にしてこんな男と密会しやがって!! 来い!! 二度と逃げ出せないようにお前を塔に閉じ込めてやる』
『いや! 離して! うっ』
リュリエルの絶叫がくぐもった。
―リュリエルが殴られた?
ヴィルトゥスの頭はこの異常事態にめまぐるしく反応したが、体がついていかない。
『いや! ヴィルトゥス様! いやぁぁっ』
リュリエルの声が遠ざかる。
『リュリエル…!! リュリエル――――!!』