聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~

ライトは目覚める。白昼夢から目覚める。

今の彼にはもう眠りが必要ないので、玉座に座ったまま、邪悪なる闇の力の触手を世界中に広げながら、夢を見るのだ。

彼の居城に侵入者がいることを、彼はとっくに察していた。彼がその気になればこの玉座に座ったままでも、闇の力で侵入者を押しつぶすことは簡単だった。だが彼はそうしなかった。侵入者の目的を知りたかった。

確かめたいのだ。その目的がもしも自分を殺すことならその者が――…。

その時玉座の正面、左右で結われた漆黒の帳の間の入口に、人影が現れる。

弓を背負い、腰には長剣を佩いた、黒髪の美しい青年だ。

見たことのある顔だと思った。

「お前はフローテュリアの者だな」

忘れもしない、あの時矢を射かけてきた男だ。腕の矢傷は深く、完治するのに時間がかかったので、まだ記憶に生々しい。

ライトはけだるげに玉座で頬杖をついたまま、侵入者に凍てつくような視線を向けた。

「俺を殺しに来たのか」

「ちがう――」

侵入者―カイは弓矢を構えようとはしなかった。腰の剣を抜こうともしなかった。

「戦うつもりはない。話があって来た」

「話だと? …ふん、酔狂なことだ」

だが少し興味を覚えた。
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