聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
3
ライトは目覚める。白昼夢から目覚める。
今の彼にはもう眠りが必要ないので、玉座に座ったまま、邪悪なる闇の力の触手を世界中に広げながら、夢を見るのだ。
彼の居城に侵入者がいることを、彼はとっくに察していた。彼がその気になればこの玉座に座ったままでも、闇の力で侵入者を押しつぶすことは簡単だった。だが彼はそうしなかった。侵入者の目的を知りたかった。
確かめたいのだ。その目的がもしも自分を殺すことならその者が――…。
その時玉座の正面、左右で結われた漆黒の帳の間の入口に、人影が現れる。
弓を背負い、腰には長剣を佩いた、黒髪の美しい青年だ。
見たことのある顔だと思った。
「お前はフローテュリアの者だな」
忘れもしない、あの時矢を射かけてきた男だ。腕の矢傷は深く、完治するのに時間がかかったので、まだ記憶に生々しい。
ライトはけだるげに玉座で頬杖をついたまま、侵入者に凍てつくような視線を向けた。
「俺を殺しに来たのか」
「ちがう――」
侵入者―カイは弓矢を構えようとはしなかった。腰の剣を抜こうともしなかった。
「戦うつもりはない。話があって来た」
「話だと? …ふん、酔狂なことだ」
だが少し興味を覚えた。
今の彼にはもう眠りが必要ないので、玉座に座ったまま、邪悪なる闇の力の触手を世界中に広げながら、夢を見るのだ。
彼の居城に侵入者がいることを、彼はとっくに察していた。彼がその気になればこの玉座に座ったままでも、闇の力で侵入者を押しつぶすことは簡単だった。だが彼はそうしなかった。侵入者の目的を知りたかった。
確かめたいのだ。その目的がもしも自分を殺すことならその者が――…。
その時玉座の正面、左右で結われた漆黒の帳の間の入口に、人影が現れる。
弓を背負い、腰には長剣を佩いた、黒髪の美しい青年だ。
見たことのある顔だと思った。
「お前はフローテュリアの者だな」
忘れもしない、あの時矢を射かけてきた男だ。腕の矢傷は深く、完治するのに時間がかかったので、まだ記憶に生々しい。
ライトはけだるげに玉座で頬杖をついたまま、侵入者に凍てつくような視線を向けた。
「俺を殺しに来たのか」
「ちがう――」
侵入者―カイは弓矢を構えようとはしなかった。腰の剣を抜こうともしなかった。
「戦うつもりはない。話があって来た」
「話だと? …ふん、酔狂なことだ」
だが少し興味を覚えた。