聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
―休む…。

休むのはいやだ。休んでたったひとり心細い想いの中に沈み込むのはいやなのだ。

だからリュティアは心を凍らせ、少し尖らせてしまう。

「休みたく…ありません」

「リュー?」

「休みたくないのです」

ラミアードの驚いたような、それでいていたわるような視線から、リュティアは目を逸らす。頑是ない幼女のような自分の言動がやりきれなくて、うつむく。そんなリュティアを見て、フリードがふんと鼻を鳴らす。

「我らが希望の星は、また何か思い詰めているな」

「思い詰めてなど……」

「思い詰めていないで、どうしてそんな顔をする?」

リュティアはうつむいたまま頬に手をやった。自分はどんな顔をしているのだろう。

「言ってみろ」

その声が今まで聞いたことのないほど優しい響きだったので、リュティアは思わず顔を上げた。

「一人の人間として、聞いてやるから」

こんなに優しい表情をしたフリードは見たことがなかった。フリードの隣ではラミアードが、ふんわりと微笑んで頷いてくれている。

「フリード卿、お兄様……」

二人の優しさに触れ、リュティアの凍った心が溶けだす。

リュティアの瞳が潤んだ。

もう限界だった。

リュティアは自分の中に渦巻く想いを、言葉にしようと思った。怖くても、もういい、聞こうと思った。

「フリード卿、お兄様、聞きたいことが…あります。カイは…カイはいったい――」

その時、突然けたたましい叫び声がリュティアの声を遮った。
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