あたしこそが最愛最高の姫である
「名前って確か…和矢くんだったよね?」
そしてあれから俺と彼女は人目につきにくい中庭のベンチへと移動した。
なぜここかは分からないけど。
そもそも何で俺なんかと話をするのか分からないけれど。
でもそんなことどうでも良い。
そんなこと考える余裕なんてない。
「覚えてくれたんだ?」
「覚えてるよ?和矢くんってまた呼んでいい?」
彼女が俺の名前を呼ぶたびに体が痺れる。
甘い痺れが突き抜ける。
「こっちからお願いしたいな?」
少し大胆なことを笑いながらさらりと言ってみたりもする。
彼女はクスクスと笑って。
「ならあたしのことは美玲って呼んでいいよ?」
少し意地悪そうにそう言った。
屋上の時もそう言われたけど、緊張のあまり全然呼べなかった。
今でももちろん呼べるわけない。
「考えとく」
彼女は確信犯で、俺は困ったように笑ってみせる。
まぁ騎王の俺が、生徒会の姫の名前を呼べるわけないし。
もし呼んだらなぜか彼女が穢れてしまいそうな気がした。
「あ、そうだ。和矢くんって暴走族だったの?」
そして不意に彼女から出た話。
一瞬俺は固まった。
「………え、知らなかったの…?」
恐る恐る尋ねると、彼女は頷いて。
「屋上の時はイケメンがサボってるだけかと思ってた。だって暴走族の存在は知ってたけど近くで見たことなかったし、もっと見た目は厳ついのかと思ってたしね」
クスクスとそう笑った。
彼女の笑顔にほっとする。
一瞬何を言われるかと怖かった。
「だから最近和矢くんのこと聞いてびっくりしちゃった」
「俺こう見えても副総長って言う2番目に偉い人だからね?」
「えぇ?こんな爽やかなのに?」
「さっき一緒にいた玄武は厳つかっただろ?俺があの世界の中じゃ変わってるの」
ふと、玄武のことを思い出す。
玄武は確実に彼女に惚れているだろう。
笑い声を上げて笑っている彼女に何気なく尋ねる。