Good-Bye Dear
震える彼女の華奢な肩をぐいっと引き寄せ後ろから壊れるくらい強く抱きしめた。
さらさらで綺麗だった長い髪は、
肩ほどまでに切られていて。
そのことに寂しさを覚えられずには
いられない。
『痛いよ…』
「だって、お前が」
お前が、泣くから…————。
『っ…、………ごめん…』
雨音が酷く耳に残る。
まだ。まだ、待って。
何も見たくなくて、何も聞きたくなくて。抱きしめる力をぎゅっと強めた。
その腕にそっと添えられた俺のものより
もっともっと小さな手。
柔らかくて、繊細な指先。
左手の薬指には俺と同じ指輪。
「………っ、愛してる………」
ぜんぶ、ぜんぶ。
きっと、お前が思う以上に、
俺はお前のことを…。
『私も……、愛してた……っ』
ゆっくり振り向いた彼女の眸から
流れる大粒の涙。
それを堪えるように微笑むその姿に
思わず涙が溢れた。
嘘でもいいから、
(愛してるって言えよ)
(この日が、この夜が)
—————…最後なんだから。
もう、絡みつくことのないその髪に
指先を滑り込ませて。
彼女に涙のキスをした…————。
(彼女は明日、)
(俺ではない人と結婚します)