【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
階段を上りながら、土屋と友達同士のようなやり取りをしてることに少し可笑しくなった。
沢森のことさえなければ、いい友達になれそうなのにな。
「待たせて悪い」
軽く身なりを整えて一階に戻ると、そんな待ってないから平気、と土屋が笑う。
……いつ見ても悔しいくらい爽やかだなこいつは。
「で、どこ行くんだよ?」
スニーカーに足を引っ掛けながら聞くと、「駅前のカフェ」と答えられる。
「沢森と鉢合わせる可能性とかねーよな?」
別にそれで、沢森も俺の話を聞いてくれるなら良いけど、絶対逃げ出すから。
それだとその後が気まずいし、きっと話どころじゃない。
「ああ、大丈夫。恵梨は今日、朝は友達と遊びに行ってるから」
「ふーん……」
沢森のこと、ほんとなんでも知ってるよな──なんて小さな嫉妬。
仕方ないだろ、今あいつの一番近くに居るのはこいつなんだから、と自分を宥めた。