【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
だって俺は、沢森に嫌われてるのだから。
それから簡単な自己紹介を終えた沢森は、前の方の席に座らされた。俺の席は廊下側の一番後ろだから、俺は沢森の後ろ姿を見つめるような形になる。
こっちを振り向かない沢森がどうしようもなく焦れったく、胸が締め付けられた。
休み時間、まあ予想はしていたけど、沢森の周りには沢山の人が群がっていた。
四方八方から飛んでくる質問に、沢森も困ったように微笑みながら応えている。
……ああ、かわんねえのな……。
そうやっていつも少し、困ったように笑うとこも。
優しげな声も──……。
『──木村君』
不意に、優しく俺の名を呼んでくれた沢森を思い出して、どうしようもなく泣きたくなった。
もう一度、呼んでもらいたい。
それが叶わぬ願いだと知っていても。