【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
プリントは資料室にあるからこれ持ってそこ言って、と手渡された二つのホチキスを弄びながら資料室に向かう。
放課後に掃除当番らしい沢森は遅れてくる、と担任が言ってた。
ガラ、と資料室を開けると、資料室なだけあってあちこちに本や紙の束が積み上がっていて。
ほんのりと、紙の匂いがした。
「……やっぱ、まだ来てねーよな」
資料室に沢森の姿はまだない。
まだ掃除してるんだろうから当たり前なのに、一つの憶測が俺を不安にさせる。
もし、来なかったら、なんて。
だって十分有り得る。
沢森は俺と二人きりなんか、どうにかして避けたいだろうし。
でも。
「……お待たせ、しました」
──沢森は律儀だから、いつだってそう、俺に真っ直ぐに向き合ってくるんだ。
来なかったらどうしよう、なんて考えてたら、カラカラと控えめな音がして開いた扉。
そこから顔を覗かせたのは、紛れもなく沢森だった。