【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
「傘持ってくりゃ良かった」
やみそうにねえな、と一人呟く。
「天気予報見てこなかったんですか?」
「あー……最近ずっと晴れてたから」
どうせ今日も晴れだろう、って高を括ったのが祟った。
なんか風もゴーゴー言ってるし。
どうすっかなあ、なんて考えていると、不意に沢森が立ち上がって。
「沢森?」
どこ行くんだ、と問いかけた俺の言葉には答えず、ガサガサと自分の鞄を漁っていた。
それから「あった」と小さく呟いた沢森は、くるりと俺の方を向いて。
「これ、貸してあげます」
そう言って、水色の折りたたみ傘を差し出してきた。
「ピンクとかじゃないんで、そこまで使いにくくないと思いますし」
「や、でも……」
「私もう一本、あるんで」
使ってください、と今度は半ば強引に押し付けられる。
滅多にないその強引さに驚きながら、俺は小さく笑った。
「……サンキュ」