【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
視線*.゜
それはほんのひと時の夢幻のような。
俺達二人だけしか居なかった世界に明かりが灯されたとき、それは容易く壊れてしまった。
そんな、夢のようなひと時。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
ぱ、と部屋の電気が点いた瞬間、沢森は我に返ったように真っ赤になり、俺から勢い良く離れた。
それを名残惜しく思いながら、「別に」と口から出るのは単調なセリフ。
……俺は結構役得だったし、なんて言えねえし。
「そ、そのプリントよろしくお願いします!」
「あ、おい……!」
呼び止めた時には時すでに遅し。
沢森は脱兎の如く、逃げ帰ってしまっていた。
一人取り残された室内で、はー、としゃがみこむ。
「あー……やべぇ」
よく耐えた俺の理性。褒めたたえてやろう。