【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
そのままその場を後にしようとすると、そんな声と共に、セーターの裾をかるく引っ張られた。
僅かに眉をしかめながら後ろを振り向くと、顔を真っ赤にしたその子が俺を見上げていた。
困るんだよ、そんな顔されても。
俺に、そのつもりは無いんだから。
「……何?」
「あの、ど、どうしても、駄目ですか?」
「うん。だって俺、あんたの名前すら知らないから」
そう言えば、その子の顔が一瞬歪んだ。
そうだ。そのまま、俺のことなんか嫌ってしまえばいい。冷たい奴だと、軽蔑しろよ。
そっちの方が、楽だからさ。
「これから知って貰えればいいです!」
「知っていくつもり、無いんだけど」
「……っ、どうして!」
「逆に聞くけどさ、なんであんた、俺のこと好きなわけ?」
その子を見下ろして、静かに問いかける。するとその子は、少し目を見開いて、困惑したような表情を見せた。