【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
──と、思ったのに。
「うおっと……あ、沢森」
「!」
着替え終わって教室から出た瞬間、誰かにぶつかりそうになって。
聞き覚えのある声に顔を上げれば、袴姿の木村君が立っていて。
「か──」
かっこいい、なんて。
言いかけて、慌ててバッと口をつぐんだ。
馬鹿。かっこいいなんて、何言うつもり?他の男の子のことを、かっこいいなんて。
でも、周りの女の子たちが皆、木村君を見てる。
髪の毛も今日は少しセットしてあって、いつもと雰囲気がちがうし。
客観的に見て、だ。そう、客観的に見て、かっこいいってだけ。袴が似合うってだけ。
ただ、それだけだよ……。