【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
「沢森?」
「あっ、えっ、なんですか?」
「や、今なんか言いかけただろ?「か」って」
「っ、なんでもないですから!」
もう、そこはスルーして欲しかったのに。
人が言うのを辞めた事をわざわざ聞き出そうとするなんて、意地悪だ。
ぷいっ、とそっぽを向くと、なんだよいきなり、と木村君が不本意そうな声を出して。
……木村君は悪くないのに、さすがに失礼な態度だったかな。
「……それ、さ」
「へ?」
不意に木村君が口を開いたから、木村君の方を見れば、木村君は少し顔を赤くしながら目を伏せていて。
それから、照れたような顔でチラリと私を見た。
「……その着物、にあってる。可愛い」
もう、なんで。
なんでそんなこと、言うの。