【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
なんで──。
「……なんか、夏祭りの事、思い出すよな」
なんで今更昔のことを掘り返そうと、するの?
「夏祭りなんて、ありましたっけ……」
「は?覚えてないの?」
「……過去の事は、忘れました」
ワントーン低くなった木村君の声に戸惑いながら、そう言ってその場から去ろうとする。
でも、まるで逃がさない、というように木村君に手首を掴まれてしまって。
木村君の視線が、私を射抜く。
「……なんだよ、それ」
「離してください……っ!」
「そんなに、俺が嫌いかよ」
その言葉に、思わず喉の奥がひゅうっとなった。
「そんなに俺が、憎いか?過去の出来事を、無かった事にしたくなるほど……?」
「あ……」
ごめんなさい、と。